ユカです

こんばんは、ユカです。



突然ですが
わたしは、vert de grisの船を降りることになりました。



本来ならば、お世話になったお客さま一人ひとりに直接お伝えすべきところを
このような形でのご報告となり、たいへん申し訳ありません。
これが私の最後のブログとなります。
言葉がまとまらず大変長くなりますが、最後のわがままを綴らせていただきます。



私の夢は、「駄菓子屋さんになること」でした。
誰に言ってもきょとんとされたり、笑われました。
高校の進路調査票に書いたときは、「マジメに考えなさい」と先生に呼び出されました。
今思えば当たり前です。でも私はずっと、大マジメでした。

私の両親は共働きでした。私たち姉妹は学校が終わると、隣に住んでいる父方のばあちゃん家にいつも帰っていました。ばあちゃん家は小さい食堂をしていました。
宿題のことはうるさく言われたけど、ばあちゃんはおやきを作ってくれたり、じいちゃんは畑に連れていってくれました。
2人とも店のことで疲れていたはずなのに、いつもいつもやさしく待っていてくれて、一緒に遊んでくれました。

でもそんなにあたたかく見てもらっているのに、
どうしても、まっすぐ家に帰りたくない日というのがありました。
友だちとケンカしてしまって、一緒に帰れないとき。
朝お母さんに怒られたのを急に思い出すとき。
ばあちゃんとじいちゃんのやさしさが、なんとなく疎ましく感じてしまうとき。
子どもながらにモヤモヤして、それを帰り道にうまく消化できなかったのだと思います。

そんなときに決まって私は、裏道をとおって寄り道をしていました。
それが「駄菓子屋さん」でした。

そこのおじさんは本業で植木屋さんか何かをしていました。駄菓子屋さんは手が空いたときにやっていたのです。
おじさんはいかにも植木職人らしく、寡黙でした。子ども相手に愛想を振りまくなんてことはありませんでした。
この人は子どもが嫌いそうなのに、なんで駄菓子屋さんをやっているんだろう、といつも思っていました。

だけどその駄菓子屋さんがあることで、私は本当に救われていました。

家に帰りたくなくて寄る日も、友だちと遊びながら寄る日も、
自分がどんな気持ちのときも、どんな天気の日も、
駄菓子屋さんはいつも変わらずに、そこにあって迎えてくれたからです。
学校から家までのあいだのクッションのように、
私にとっては大きく、無二の存在でした。

おじさんが本当に子ども嫌いだったのかはわかりませんが、
「今日あの子とケンカした」とポツンと言った私に、同じように「そうか」とだけポツンと言ってくれたその距離感が、
逆にとてもあたたかかったのを今でも覚えています。



「駄菓子屋さんになりたい」という夢は、いつか
「カフェをする」という夢に変わっていました。
誰かにとっての、あの駄菓子屋さんのような存在。
でももっとのんびりできて、あったかいものが飲めて、音楽が流れて、緑があって、
モヤモヤの日も嬉しい日も寄れる、心地よい距離感のある場所。

描くのは簡単です。
だけど形にするのは本当に大変で、つらいこともたくさんあり、
そして人が見ていないところでたくさんたくさん努力しなければ
叶わないし、叶った後も続けていけないのだということを
私は、オーナーとグリさんと過ごす中で、その姿から毎日教えてもらいました。



体力もなく器用でもなく歩みの遅い私は
たくさん失敗し、たくさん泣き、たくさん自分のことが嫌いになり、
自分の目標はなんだったんだろう、今どこにいるんだろう、と道に迷うことも
たくさんありました。自分の弱さもたくさん知りました。

だけど、オーナーとグリさん、そしてみんなが
毎日毎日ひたすら前を向いて、いっしょうけんめいに夢を追いかけているのを見て、
自分も本気になって目標を追いかけなければいけないと
思うようになりました。



私はずっと「自分はのんびりタイプだ、別に止まってもいい」と思ってきました。
だけど、みんなといるようになって、
「もっと私も進みたい、遅くてもいいから止まりたくない」と
思えるようになっていました。

それは、ここにいるみんなが本当に真剣に、
店のために、自分自身のために、愛を持って仕事をしているからです。
ひとりひとりが本当にすごい。最高のチームです。
そんなみんなを知っているから、もう立ち止まってはいけないなと思いました。



私がこれから追おうとしている目標は、
今はまだ霞んでいるような状態で、見えたり隠れたりしています。

だけど、やっと見えてきた気がするひとつのキーワードを
私もみんなのように真剣に、いっしょうけんめい、追いかけたいと思います。



「駄菓子屋さん」からここまで15年以上かかりました。
もう少し長旅になりますが、
もっと体力をつけて、もっと強くなって、だんだんスピードをあげないといけません。
つらいことも大変なことも踏ん張れる力をつけます。



一緒に働いたみんなへ。

私はみんなのことが大好きです。

ポンプ小屋のことが大好きです。

あやさんのことが大好きです。

みんなといられて本当に本当に本当に楽しかった。
年末も卒業シーズンも母の日も、大変だったけど楽しかった。
いっぱい笑って、いっぱい泣いて、いっぱい喜んだね。

グリさんがいつもこのチームを「船」と呼ぶけど
みんなでご飯を食べるとき、食べっぷりがほんまの海賊みたいで、私は大好きでした。

グリさん。えみさん。チコさん。ナミさん。
のぐちゃん。さこちゃん。みぃちゃん。さおちゃん。
オーナー。あやさん。ナオさん。
頑張ることを、前に進むことを、教えてくれてありがとう。

仲間にしてくれてありがとう。



たくさんのお客さまに出会わせていただけて、幸せでした。
いつもあたたかく見守っていただいたお顔がたくさん浮かびます。
直接ご挨拶ができず、本当に申し訳ありませんでした。
笑顔や明るさや心遣いなど、女性として、人生の先輩として、
いっぱい学ばせていただきました。

今後とも、私の大好きなvert de grisをよろしくお願いいたします。



ありがとうございました。

2014.6.10 土屋 有加